松村右介
Joined NRTAS in 1994
入社後は、外国の貨物会社を担当し、貨物専用機への搭載、取り降ろしのランプでの業務全般を経験しました。その後、輸出入貨物の取り扱い業務に携わりました。そこでは、貨物の運び方や置き方一つにも厳格なマニュアルがあり、丁重な取り扱いやスピード感、報告書に記載する内容の細かさなど、細部に至るまで非常に高い水準が要求され、とても苦労しました。しかし、そこで世界トップクラスのサービスレベルを肌で知り、以後は自分にとって当たり前の基準値も高くなりました。
ハイレベルなニーズを叶えるためには、個々人の意識レベルを引き上げるだけでなく、人員配置や仕組みなどの体制づくりも欠かせません。提供できるクオリティを引き上げつつも、自分たちにできないことも見極め、要望に応えていく。そのために交渉を何度も重ね、人間としてもタフになったと感じます。そうして気づけば貨物業務に20年以上の時を費やしました。先輩たちの丁寧な指導のおかげもあって、貨物のエキスパートと言えるほど自信もつきました。
このまま貨物一筋のキャリアを歩むだろう。そう思っていたところ、旅客サービスに異動が決まりました。当時はグランドハンドリング部門から旅客サービス部に異動するケースはほぼなく、青天の霹靂でしたね。5年間所属した旅客サービス部では、それまでの貨物でのマネジメント経験を活かし、マネジメント業務に従事しました。
旅客サービスに関する知識はまるでなく、新入社員の頃のように右も左も分からないような状態でしたが、ベテランや若手に関係なく丹念にコミュニケーションを交わしながら部の課題を吸い上げ、必要なことやタスクを洗い出していきました、ANAのおもてなし品質をさらに向上させることや個人の業務量の最適化など、働きやすい環境づくりにも注力しました。
ようやく旅客サービス部での業務に慣れ始めた矢先、また異動を告げられます。任命されたのは、米子空港での空港所長でした。内示を受けた時は、あまりの衝撃にそのときの記憶がないほどです(笑)。
世界有数の巨大な国際空港・成田から、定期便は1日6便で整備を除いてANAスタッフが一人という米子空港へ。国内空港も空港所長という職も縁遠く、大きな不安や孤独感に襲われる日々が続きました。
空港所長の業務は、空港の運営管理を中心に契約管理や受託責任者として受託便の受け入れ数の調整や、委託管理責任者として日常業務の安全管理などを担っています。
基本的にオペレーション業務を行うのは、総代理店契約を結んだ地元企業さんですので、スタッフの皆さんがANAのマインドをもって安全に業務が出来る環境を作るのが所長としての役割になります。
安全・保安面では、ハイジャックや危険物などお客様の安全を脅かす人や物に対処し、また、定時性、快適性向上施策の対応を関係各所と調整しながら取り組みを進めます。
所長着任前には、一通り教育や訓練を経たものの、何か起きた時にその都度問い合わせ、現場で覚えていくのが実際のところでした。とにかく何もわからないなりにも声を上げることで、誰かが拾ってくれたり、つないでくれて助かりましたね。ANAグループの各部署のスタッフや米子空港の関係スタッフが本当にいい方ばかりで、それが救いでした。
米子空港所長になり半年も経たない頃、その日の業務を終えて帰宅すると、米子空港内での保安に関わる脅威情報の通報がありました。
急いで職場に駆け戻るものの初めての事態にしばらく動揺していました。警察や各所への連絡を含め、何もかも自分で判断・処理しなければならない。そう思い込んでいた私は、羽田で運航統括責任者を務めるオペレーションディレクターに連絡します。すると、「安心してください。一緒に解決しましょう」と問題処理への道筋をクリアに示し、全面的なサポートを受けて、無事に対処。
このとき、未経験の大きなトラブルも自分ひとりで全てを背負うのではなく、現場の運営スタッフやANAグループなど周囲に協力を仰ぎながら解決していけばいいという意識がより一層強まったんです。
空港所長が関わる人は、社内の各部署から、地元の自治体、空港ビル、国土交通省航空局、自衛隊など、多岐にわたります。何をどこに連絡すればいいか一切わからない状態から2年をかけ顔や名前を覚え、今では所長業務の全体像も掴めるようになりました。そして就任当初はコミュニケーションに恐縮する部分もあったのですが、ようやく自分の意思をはっきりと伝え、交渉や調整をし、日々の業務を動かしていけるようになったと感じます。臆さず本音で話し合えるような関係性もそれぞれと築け、仕事もしやすく、楽しい。 いま率直に定年までずっと米子にいたい気持ちでいっぱいなんです(笑)。
皆さんの中には空港所長を目指す方もいるかと思います。ですが、これをすれば確実になれるといった決まった型はありません。職種もキャリアパスも、実にいろいろなタイプがいます。逆に言えば、すべての経験が役立つといえます。私も空港所長になるとはまったく予期しなかったことですが、すべてが想定通りに進むキャリアでは、いまのようにさまざまな人と巡り会えたり、多様な経験も積めなかったと思います。ときに自分の望み通りにはならないこともあるかもしれませんが、なんでも吸収する意気でNRTASで充実した日々を送ってください。
出社 初便出発(7:25)
当日の天候や航空機の運航状況のほか、当日のお客様の予約数、VIPの有無などを確認します。
保安検査場へ向かう
検査会社のスタッフとコミュニケーションを図り保安機器の状態や保安に関する情報収集
貨物上屋へ向かう
貨物を収容する施設へ向かい、不備がないか点検します。
デイリーMTG
各部署の代表と保安検査会社が集い、その日の共有事項を報告します。
旅客システムに纏わる説明会
社内プロジェクトの進捗説明会にオンライン参加
昼食
エアポートセーフティー会議
整備士、総代理店や保安検査会社などを交え、月に1回空港の安全について話し合います。
国内所長向け説明会
国内の空港所長を対象とした説明会にオンライン参加
退社
ANAの国際線事業をリードするNRTASは
さらなる高みへ。新たな時代を切り開きます。